再演となるミュージカル「黒執事」~寄宿学校の秘密 2024~に、 “新キャスト”として参加する4人が演じるのは通称“P4”。伝統あるウェストン校の4つの寮を代表する監督生《プリーフェクト》です。作品に新たな風を吹かせるべくエネルギーと気概に満ちた彼らの、チームワーク抜群の座談会をお届けします。
“芝居好き”の4人が集まった
――まずは今作へのご出演が決まったときのお気持ちを振り返って教えてください。
神里『黒執事』の漫画とアニメは出演が決まるまで触れたことがなかったんですけど、ミュージカル版はコロナ禍に配信で見ていて、そのころから「この世界観、素敵だな」と思っていました。出演が決まったときは嬉しかったですし、はじめて共演する方がたくさんいらっしゃるので、その方々とも一緒にお芝居できるのも楽しみでしたね。
栗原僕も率直に嬉しいっていうのが一番でした。役柄としても、学園の憧れの的であるP4って、やっぱり男子なら一度は憧れるような存在ですよね。それを演じられるのは楽しみでしたし、光栄であるとともに、責任も伴ってくるなということは思いました。監督生として寮の生徒たちをまとめられる人物なんだということを、しっかりと舞台上で表現しなくてはいけないなと思いました。
塩田『黒執事』って原作の漫画からアニメや映画までやっているすごく有名な作品で、歴史あるミュージカル版に出演できると聞いたときは、本当に心の底から嬉しくて。しかも監督生のハーマン・グリーンヒルは、寄宿学校編を形づくるキーになる4人のうちの1人なので、そんな役柄を演じられるという喜びが大きかったです。もっともっと努力して臨まないといけないなっていう緊張感もわいてきて、楽しみと緊張感の両方の気持ちがありました。
定本僕も、『黒執事』という本当にたくさんの人に愛されている作品に出演できることは素直に嬉しかったです。寄宿学校編の初演も見ましたが、日常生活とはまったく違う世界観に冒頭からぎゅっと心をつかまれて、物語に没頭してしまいましたね。それに、演出の松崎史也さんとは別の作品で一緒にやらせていただいているんですが、ぜひもっといろんな作品を一緒につくっていきたいと思っていたので、このミュージカル「黒執事」という作品でまたご一緒できることも楽しみでした。
――おたがいの印象についてもお伺いします。まずはこのなかで唯一ご共演経験のある栗原さんと塩田さん。
塩田航大はよく一人でボケて、それを誰も聞いていなくて、でも一人で笑ってるんです。誰かに共有するわけでもなく、本当にただ一人で楽しんでいるときもあれば、自分のなかで傑作だ!っていうネタができると「ちょっと一期くん、一期くん」って言ってきて、場を和ませてくれたり。
神里わかるわかる。その雰囲気はもう感じてる(笑)。
塩田頭の回転がすごくはやいので、いろんなボケが入り乱れているというか。しかもこれだけスタイルよくて、ダンスできる、歌もうまい、なおかつ英語ペラペラなんですよ。
定本へぇ~!
神里まじで⁉
栗原高校生のときにニュージーランドに留学していて、それこそウェストン校みたいな歴史ある学校の男子寮に入っていました。
塩田だからもう万能、カリスマなんです。
栗原こうやって言われるの、恥ずかしいですね……(笑)。いやでも一期くんこそ、
塩田あ、英語で話してもらっていい?
栗原ダメでしょ(笑)。
定本いいよいいよ、せっかく英国の物語だから。
栗原では……He is one of the funniest boys.
神里これは伝わった(笑)。
定本なんかわかった!(笑)
栗原一期くんこそすごくおもしろくて、場を和ませるっていう意味では自分と近しいものを感じています。ちょっと暗い雰囲気になってしまいそうなときでも、率先して明るくしてくれる、たとえるなら太陽のような魅力を持っている人。僕はおもしろいことを思いついたら、真っ先に一期くんに伝えて共有したいっていうのはあります。
塩田じゃあおもしろいこと思いついたらさ、今度から優希さんと楓馬さんに共有しよ、一緒に。
神里・定本……。
塩田……っていうのはNGですか?(笑)
――年下組の栗原さん、塩田さんと、先輩組の神里さん、定本さん。バランスのよい組み合わせですね。先輩組のお二人から見た栗原さん、塩田さんの印象はいかがですか?
定本全然先輩っていうような立場じゃないですけど、二人とも礼儀正しくて、すごくいい子たちだなっていうのが純粋な第一印象でした。稽古が始まってからは、役に対してこういうアプローチをしてみようっていろいろ取り組んでいるのもいいなあと思います。わからないことや聞きたいことがあったらすぐに声を掛けにきてくれるのも、一緒にお芝居をつくるうえではすごく大切なことなので、いい意味で遠慮せずに来てくれてとてもありがたいです。
神里まったく同じですね。
定本以下同文?
神里以下同文(笑)。みんなで作品をつくるんだっていう気持ちがすごく強い二人で、それが伝わってきますね。お芝居がすごく好きなんだろうなっていうことをめっちゃ感じるので、とってもやりやすいです。楓馬もそうで、お芝居が好きな4人がそろったんだな、ここからいいチームワークでやっていけるんだろうな、と手応えを感じています。
――神里さんと定本さんも今回が初共演となります。
神里・定本そうですねえ。
塩田ハモった(笑)。
定本神里さんは僕にとっては俳優としてデビューする前から見ていた存在なので、大先輩というか、雲の上の存在です。
神里え~! ほんとに~?
定本本当にそういう感覚で見ていました。「見ていた」って、今は違うって意味ではないですけど(笑)。何回かお会いする機会はあって、いろいろお話もさせていただいていたんですが、お芝居でがっつりご一緒するのは今回がはじめて。神里さんは僕のイメージでは先輩後輩っていう壁をつくらないというか、フラットにいてくださる方なので、僕も意見を言いやすいですし、一緒にいて落ち着く、やりやすい、居心地のいい方だなあというふうに感じています。
神里ありがとうございます。嬉しいです。ある作品で、僕から楓馬に同じ役を引き継ぐような形でやらせていただいたことがあるんです。僕も自分の前にその役を演じていた方に対して、いま楓馬が言っていたのと同じ気持ちを抱いていたので、それはすごくわかりますね。楓馬とはずっと共演してみたいなと思っていたので、今回それが叶ってすごく嬉しくて。一緒にやるからにはやっぱり先輩後輩みたいな関係ではなく、P4の4人でチームワークを築いていけるようにしたいし、僕もこの3人は居心地がよくて話しやすいし、本当に感謝ですね。
個性豊かな4つの寮それぞれの魅力
――皆さんが演じるキャラクターとそれぞれが代表する寮について、特徴や魅力的だなと感じていらっしゃるところを教えてください。
神里エドガー・レドモンドが監督生を務める深紅の狐《スカーレット・フォックス》寮(通称:赤寮《レッドハウス》)は、英国随一のエリート校といわれるウェストン校のなかでも特別高貴な身分の生徒が集まる寮なんですよね。特別高貴だと言うだけあって、やっぱり品があって艶やかというのが魅力だと思います。演出の松崎さんからも「品格を大切に」というお話があったので、日頃から姿勢を正して生活することを心掛けています(笑)。
栗原ロレンス・ブルーアーは、勉強ができて、勤勉で実直で素直で、というのが一番の魅力だと思います。ブルーアーだけではなく、紺碧の梟《サファイア・オウル》寮(通称:青寮《ブルーハウス》)には勉学に長けた、でも運動は得意ではないという生徒が多いんですが、それでも一生懸命ではあるというところを、寮の色として出していけたらなっていうふうに考えています。
――一方、翡翠の獅子《グリーン・ライオン》寮(通称:緑寮《グリーンハウス》)の生徒は運動が得意で、いわゆる体育会系です。
塩田ハーマン・グリーンヒルは情熱あふれる正義感が強い人で、そして情に厚いところが魅力的だなと思っています。出し惜しみなく全力フルパワーを出せる役柄なので、とにかく体幹を鍛えて、腹から声を出すことを心掛けています。
神里ずっと筋トレしてるんですよ。稽古場は空調が効いているからみんな涼しい顔してるのに、一人だけずっと汗かいてる(笑)。
――物語のなかで英国の伝統的なスポーツであるクリケットが登場しますが、バットで素振りをしていらっしゃるそうですね。
塩田はい。グリーンヒルはクリケットに真摯に向き合っているので、僕もクリケットのことをもっともっと好きになっていけたらなって思っています。
神里まず形からそれだけつくり込んでいくのがすごいよね。
――そして美術や音楽などの一芸に秀でた、アーティスト気質の生徒が多いのが、紫寮《パープルハウス》と呼ばれる紫黒の狼《ヴァイオレット・ウルフ》寮です。
定本青寮は勉強、緑寮なら運動っていう特色があるなかで、紫寮はバラバラな個性を持った人がおたがいを尊重しあっている寮だと思います。僕は普段あんまりハイテンションでいる人じゃないので、バイオレットとはそういう部分は似てるかなって思ったんですが、舞台ではボソボソしゃべるわけにはいかないですし、でも声の圧が強くなると、イメージしていたバイオレット像とちょっと変わったりして。どうしたら、観に来てくださる方が思い描いているバイオレットを演じられるのかなって考えています。
――そんな個性豊かなキャラクターを通じて作品をつくりあげていくにあたり、皆さんがチャレンジしたいと考えていることを教えてください。
塩田松崎さんが顔合わせのあと、キャスト一人ひとりに声を掛けてくださったんです。稽古が始まってからも、僕たちの芝居を見てまず「いまのよかったよ」ってほめてから、次こうしてみようかってアドバイスをしてくださって。モチベーションを上げてくださる素敵な演出家さんだなと感じているので、もっともっとレベルアップして、この作品に関わらせていただく時間を実りあるものにしたいと思っています。それから、個人的にはこの3年間ずっと同じ役を演じさせていただいていたので、その役としての塩田一期をご覧になっていた方に「これほんとに、あの塩田一期?」と思っていただけるように、ハーマン・グリーンヒルという役を演じられたらと思います。
栗原僕もロレンス・ブルーアーのような勤勉な役柄は初挑戦になります。自分自身、ちょっと難しいなと感じる部分もあるんですけれども、舞台に立たせていただくからには「そこにロレンス・ブルーアーが立っている」と思ってもらえるように、姿勢をよく、そして眼鏡をかけて。
塩田形からね。
栗原そう(笑)。外見はもちろん中身として、ロレンス・ブルーアーならこういうふうにしますよねっていうふうに随所で思っていただくのが目標です。
定本個人的な抱負として、最近はなかなか曲数が多いミュージカルに出演する機会がなかったので、そういった意味でも自分の歌をもっと強化していきたい、挑戦していきたいという気持ちがあります。P4として歌うことが多いので、シンプルな技術はもちろん、P4としての存在感を出せる歌い方をしっかりと磨いていかなきゃって思っています。
神里初演を経験した立石俊樹さんと小西詠斗さん、上田堪大さんが、顔合わせの挨拶のときから、またさらに覚悟をもってこの再演に挑んでいらっしゃるんだなっていうことを感じました。でも引っ張っていくぞ!みたいな感じではなく、静かにカンパニーを引き連れてくれている。そんなお二人の覚悟に負けないように、僕たちもみんなでこの作品をよくしていきたいなって思っています。
P4の仲良し度はまさかの……
――稽古序盤ながらすでに打ち解けていらっしゃる皆さんですが、本読みのときを1、公演初日を10としたら、いまの打ち解け度は?
定本1.5。
栗原えっ!
神里ひっく! だいぶ低いな!
定本まだ伸びしろがある。0.5プラスになっただけでこれだけ仲良かったら、10までいったらどうなるの?っていう期待も込めて。
神里なるほどね。僕的にはどうかな……だいぶ打ち解けてるなって思ってるので、80くらい。
塩田10越えた⁉
神里間違えた、10点満点だから8だ(笑)。
――本番までには本当に10段階で80まで仲良くなっていらっしゃるかもしれませんね。では最後に、公演に向けてお客様へのメッセージをお願いします。
定本2021年の初演はコロナ禍の影響でいろいろ大変な時期だったので、観たくても劇場に足を運ぶことができなかった方がたくさんいらっしゃると思います。そんな方にも、もともと『黒執事』という作品を愛してくださっている方にも、この再演をおもしろい作品としてお届けできるよう全力で努めますので、ぜひ楽しみにしていてください。
塩田初演を越えるような素晴らしい、素敵な作品にすることをカンパニーの全員が目標として掲げています。人間だれしも生きていくなかでいろいろ大変なこともあるので、自分たちの日常生活とは違うミステリーやファンタジーの世界に触れて、ちょっとでもリフレッシュ、息抜きになったら、笑顔になってもらえたら嬉しいです。
栗原今回、4つの寮対抗でクリケットの試合をするんですが、戦術にもそれぞれの寮の色が出てすごくおもしろいですし、特殊な闘い方も出てくるので、それも楽しみにしていただけたらなって思います。寄宿学校編という作品のいろいろなギャップ、おもしろいシーンもすこしダークな部分も、思う存分楽しんでいただけたらと思います。
――せっかくですので、簡単な英語で一言いただけますか?
栗原I wish you can have fun at this musical. So, I just say just enjoy this stage! Thank you.
(このミュージカル「黒執事」を楽しんでいただけることを願っています。ぜひ楽しんでください!ありがとうございます。)
神里・定本おお~!
塩田すげ~!
神里では僕も英語で……は無理なんですけど(笑)。楓馬も言ったとおり、やっぱり初演はキャストの皆さんもマウスシールドをした状態で演じていて、お客様も厳しい状況のなかで観に来てくださった方もいれば、ご観劇が叶わなかった方もいると思います。今回はすべての方に楽しんでいただけるように、そして「いま上演しているなかでこの作品が一番おもしろい!」と言っていただけるように、僕たちもしっかりとチームワークを築いてがんばって演じていきます。サンキュー。あ、ちょっと発音違うな。Thank you.
一同(笑)。
取材・文=榊 恵美 撮影=大塚浩史(DOUBLE SQUEEZE Inc.)