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ヴォルフラム・ゲルツァー役 小野田龍之介
さらに超える作品に
ミュージカル「黒執事」(通称:生執事)で対照的な執事を演じる、セバスチャン・ミカエリス役 立石俊樹さんとヴォルフラム・ゲルツァー役 小野田龍之介さん。初対面ながら「ご主人様自慢」ですっかり意気投合したお二人が、公演に向けて高まる期待感を語り合いました。

歴史を引き継ぎ、新しい仲間とのチームワークを築きたい
――立石さんは「寄宿学校編」初演・再演に続き3度目、小野田さんは初めてのご出演で「緑の魔女編」に臨みます。
立石「寄宿学校編」の初演・再演と続けていった先で新作に挑めることが、率直にとても嬉しいです。そして演出の毛利亘宏さん、音楽の和田俊輔さんという、これまでの「生執事」をつくってきたお二人や、小野田さんをはじめ実力派ぞろいの新キャストの皆さんとご一緒できることも楽しみです。魅力を引き継ぎつつ、みんなでまた新しい作品をつくっていきたいなと意気込んでいます。
小野田僕も出演が決まってすごく嬉しかったです。「生執事」は、初期の頃から何回か観させていただいているんです。恥ずかしながら当時は原作漫画を読んだことがなかったんですが、なんの違和感もなく没入できましたし、キャラクターたちが生き生きとしていて。この作品おもしろいな、と思ったことをよく覚えています。今回、自分が携わらせていただく、それもヴォルフラムという、男性から見ても惚れ惚れするような、かっこよくて愛の深い、情に厚い人物を演じる機会をいただきまして。まあ、僕は「情に厚い小野田」と言われていますから、ぴったりだなと(笑)。
立石ははははは! 小野田さん、イメージぴったりですよね。
小野田よかった(笑)。出演するにあたって漫画も読ませていただきましたけど、非常に耽美な世界観だからこそ、ちょっとしたやりとりにクスッとしたり、ドキッとしたり。人間の琴線に触れてくる漫画だなと思いましたね。前回の「寄宿学校編」よりも今回の「緑の魔女編」のほうがいわゆる「ザ・黒執事」というイメージがあるけど、こういう雰囲気の「生執事」は立石さんも初めてなんだよね?
立石そうなんです。また違った雰囲気の物語に挑めるのが嬉しいです。ちょうど「緑の魔女編」のアニメも毎週見ているんですけど、すごく色鮮やかに、繊細に表現されていますよね。
小野田しかも、キャラクターたちが身近に来てくれたような感覚があるよね。アニメのあとすぐにミュージカル版をやることってなかなかないのですごく楽しみだし、お客様も持っていらっしゃるであろうこのワクワク感を、僕たちも大事にしたいなって思いますね。
――立石さんは「寄宿学校編」初演でミュージカル初主演を務められました。今回キャストでは唯一続投され、座長として新しいカンパニーを率いることとなります。
立石「座長として」というのがどういうことなのか、今も分かったつもりはないんですけど、振り返ってみれば当時はもっと分かっていなかったなと思います。でも、今回は以前より「僕らしく」いられるんじゃないかなと思っています。ほとんどのキャストの方が初・「生執事」なので、やっぱりコミュニケーションをしっかり取っていきたいですね。役者同士の関係性が深まれば深まるだけ、みんなで一緒に作品をつくっているんだっていう意識は強くなりますし、そうやってチームとしてのモチベーションを上げていきたいなと思っています。
小野田僕は立石さんにしっかりついていきたいなと思っていますけど、ある意味では仲良くなりすぎないということも意識したいですね。ファントムハイヴ家の使用人たちにはチーム感があるじゃないですか。対するヴォルフラムたち「
立石実はその「チームセバスチャン」は「寄宿学校編」には登場しなかったので、僕も今回初めてご一緒することになるんです。過去作を見ていて、セバスチャンと使用人たちの場面はコミカルで楽しい、好きなシーンだったので、ようやく会えるのがすごく嬉しいですね。物語の中ではこれまで一緒に過ごしてきた時間があるんだということを表現するためにも、それぞれの色をしっかり出しながら、いいチームワークを築いていけたら、と思います。
可愛すぎる主人に仕える「●執事」と「●執事」
――お二人とも執事を演じられますが、それぞれが仕える「坊ちゃん」「お嬢」とはビジュアル撮影でご一緒されたそうですね。初出演となるシエル・ファントムハイヴ役の小林郁大さん、ジークリンデ・サリヴァン役のClaraさんについて、お二人からご紹介いただけますか?
立石郁大くんは13歳なんですが、僕自身がその年齢の頃は舞台に出るだなんて考えられなかったので、もう尊敬の気持ちしかないですね。ちょうどシエルと同い年ですし、本当に漫画から出てきたような雰囲気で、もう、すごく可愛いんですよ。撮影のときも「撮影より立石さんに会うほうが緊張する」って言ってくれていたらしいんです。それが申し訳ないというか、稽古が始まったらすぐその緊張をほぐして打ち解けられたらいいなと思いますし、「何かあったらすぐに助けてあげたい!」という感情が芽生えています。とはいえ彼には彼の闘いがあると思うので、あくまで何かあったらサポートするというスタンスで。郁大くんだからこその表現をたくさんいただけると思うのでそれも楽しみですし、板の上でしっかりやりとりができるようにがんばりたいと思います。
小野田やっぱり、一定の距離を取るっていうのは大事だよね。若ければ若いほど、表現が素直だと思うんですよ。その素直な表現がちゃんといい表現として板の上に乗るような、厳しさというか緊張感、距離感を心掛けたいなと思います。うちのClaraはね、トマトが好きなんですけど、撮影しながらだんだん静かになっていくから「大丈夫?」って聞いたら、ちっちゃい声で「お腹がすきました……」って。
立石可愛い~!!


小野田うちのClaraはそういう感じの子ですね、可愛いです。
立石それで思い出したんですけど、郁大くんも可愛いんですよ。「お腹すいた」って同じことを言っていて、ケータリングのチョコレートのお菓子をいっぱい食べてました。可愛かった~。でも可愛いからって「可愛い、可愛い」って近づきすぎないように気を付けます(笑)。
小野田可愛いよねえ。やっぱり「ミュージカル大好きおじさん」としては、僕自身が子役時代にそう思わせてもらったように、彼女たちに「ミュージカルっていいなあ」って思ってもらえるような作品、チームになったらいいなと思います。あとね、うちのClaraは僕のことを「ヴォルフラムにそっくりだった!」って言って帰っていったらしいんですよ。
立石え~可愛い~! それはすごく嬉しいですね。
小野田うちのClara、可愛いんです。どの作品でも素敵なビジュアルを撮っていただきますけど、やっぱり漫画とかアニメのキャラクターのビジュアルってアガるよね。
立石分かります、分かります。
小野田漫画の絵に「ちょっと似てるかも」とか、「あ、いい感じだな」とか思っちゃいますね。ヴォルフラムはどうしてもポーズがワンパターンになりがちなところもあって、この作品とキャラクターのことを僕の何倍もよくご存知なスタッフさんたちに委ねる部分も多かったんですが、とにかく「絵に忠実に」ということを意識した撮影はすごく楽しかったですね。
立石僕は3度目でしたが、「寄宿学校編」の再演からビジュアル撮影までに他の役柄も演じているので、あらためて「こんな感じでどうだろう」と試行錯誤していく撮影でした。そして久しぶりに衣裳を身に付けると、スタイル維持の問題が……(笑)。セバスチャンとして、ここからまたがんばって体型を絞ります。
小野田え~! 無理しないでね、体力勝負だから。
立石そうなんですよね。体力は維持しつつ、ビジュアルの再現性はお客様も楽しみにしてくださっていると思うので大切にしたいです。やっぱり見た目から伝わるものって大きいですよね。
小野田大きいね。漫画やアニメーションから受ける印象と、実際に人間が演じるときの印象も違うし。ヴォルフラムは男性的なキャラクターなので、イラストよりももうちょっと強さが見えるほうが、人間ドラマとしては真実味があるんじゃないか、とかね。そういうアプローチも楽しいなと思います。僕も今回は筋肉をつけるところはつける、絞るところは絞って、やっぱり逆三角形を意識していきたい。自慢の胸筋でがんばります。僕は「胸執事」だから、立石さんはどうする?
立石ははははは! じゃあ「薄執事」とか(笑)。
小野田「薄執事」と「厚執事」でいきましょう(笑)。
多様な個性から生まれる、混沌とした色気のようなもの
――お稽古開始まではまだお時間がありますが、すでに台本もお読みになっているそうですね。
立石まだ準備稿の段階なんですが、楽曲それぞれにイメージというか、こういう構成、曲調で、こんなことを伝えるナンバーにしたい、といったことが書かれているんです。それで音楽を想像しながら台本を読んでいくという作業がすごく楽しくて。僕自身の予想とは違う雰囲気になりそう、というシーンもあるので、皆さんの期待をいい意味で裏切れるんじゃないかと思います。
小野田準備稿の段階でここまでワクワクさせてくださるものができていることに驚きましたね。しかも、稽古場ではこれを超えたものが僕たちのところに届くっていうことだから。どんどん期待が高まっているんだけど、和田さんはどんな音楽をつくる方なんですか?
立石これまでの「生執事」を拝見した以外だと、僕はダークファンタジー系の作品でご一緒したことがあるんですが、やっぱりダークなテイストのものが特にお得意な方という印象はありますね。
小野田じゃあ今回の「緑の魔女編」もぴったりだ。
立石はい。それでいてキャッチーというか、心地いい音楽をつくってくださる方だなと思います。
小野田音楽自体も楽しみだし、『黒執事』の耽美な世界観を2.5次元ミュージカルというくくりで表現するとなると、バトルシーンも直接的ではなくて、歌い踊りながら戦う、身体表現を使ったものになってくるよね。クリエイティブチームからどういう土台をいただけるのか、ワクワクします。演出の毛利さんとは久しぶりにご一緒させていただくんですよ。当時はまだ10代で、毛利さんもミュージカルの演出をされるのが初めてだったんです。それからお互いにさまざまなキャリアを積んで、こうして再会できるのが本当に楽しみですね。
立石僕は今回初めて毛利さんとご一緒するんですが、ビジュアル撮影のときにご挨拶させていただいたら、すごく柔らかい雰囲気で、気さくで優しい方でした。
小野田そうだよね。それで誰よりも一生懸命で、一緒に作品づくりをエンジョイしてくださる演出家さんだなっていう記憶があります。
立石うわ~、それは素敵ですね。稽古場でお会いするのが楽しみです。
――お稽古、そして本番が待ち遠しいですね。それでは最後に、お客様に向けてのメッセージをお願いします。
小野田長く続いている「生執事」シリーズの中でもスケールの大きい、濃密な作品をお届けできると思います。2.5次元という世界観をさまざまに経験している俳優もいれば、今回初めて2.5次元の世界観で演じる俳優もいて、本当にいろんな才能やエネルギーが入り混じった公演になる予感がしています。そういう、ある種混沌とした色気のようなものが、「生執事」にはぴったりだと思うんですよね。ファンの皆様がもともと愛していらっしゃる『黒執事』の世界を、より大きなスケールで楽しんでいただけるようがんばりますので、ぜひ劇場に足をお運びいただければと思います。
立石まだ稽古は始まっていませんが、すでにワクワクしている自分がいます。今回初めてご一緒するキャストさん、クリエイターの皆さんが本当に心強くて、いい作品になることは絶対に間違いないので、皆さんに本番を素敵な形でお届けできるように、僕たちみんなでがんばっていきます。劇場でお待ちしております!
取材・文=榊 恵美 撮影=大塚浩史(DOUBLE SQUEEZE Inc.)